医療安全と薬の6Rについて
嫁がソファで読書をしていたので「どんな本なのかな」と覗いてみると医療安全の本でした。ちょっと興味あったので6Rの意味とか教えてもらってたら意外と盛り上がってしまい、なかなか面白い話が聞けました。
誤薬防止のための6R
薬に関する事故は医療事故のなかでも頻度が高く、(1)患者、(2)薬剤、(3)量、(4)経路、(5)時間、(6)目的の間違いによるものがある。これらは誤薬防止のための具体的な確認事項として6Rと呼ばれている。
- 正しい患者 (Right Patient)⋯フルネームで確認
- 正しい薬剤 (Right Drug)⋯薬剤名・規格
- 正しい量 (Right Dose)⋯mL、mg、単位など
- 正しい経路 ( Right Route)⋯末梢・中心静脈などのライン
- 正しい時間 (Right Time)⋯日付・時間
- 正しい目的 (Right Purpose)⋯何のために使用するか
出典:ひとりで学べる医療安全(照林社)
参考:医療安全情報(日本看護協会)
参考:ヒヤリハット事例集DB(日本医療機能評価機構)
「6Rは医師から指示が出た時点で看護師はパッと把握できるものなの?」
「指示が出たときもだし投与するときも確認するよ」
6Rとは患者に安全に与薬するチェック項目であり、6つ正しいRで「6R」と呼ばれている。なるほど確かに意味はわかった。しかしこれだけでは6Rがどういうものかよくわからない。やはり実際の医療現場でどのように使うのかを知りたい。
ダブルチェックもただやるだけでは駄目
ーー 6Rの確認はダブルチェックする?
してるよ。それも落とし穴があって、例えば経験のない看護師にとっては不安な薬でも副師長にダブルチェックしてもらったら安心しちゃうよね。自分ではあまりわかってないのに副師長が言うんだから間違いないだろうと。でももし、副師長がたいして見てなくてOKって言ってしまっていたらどうなると思う?新人は安心してそのまま持っていって間違った投与をしてしまうでしょ。だからお互いに「本当にあってるの?」という意識で見ないとダブルチェックしてもただの時間の無駄にしかならないし、逆に危ないことをしてしまうの。
ーー じゃあどういう相手とダブルチェックしたらいいの?
どういう相手であっても、ちゃんと間違いがないかお互いが意識して相手に依存せず、危機意識をもってやらないと誰がやっても意味がないよ。1年目の子が先輩に「本当かなぁ」と思っても言えないこともあるけど言わないと駄目。
与薬は徹底的に確認して医療事故を防ぐ
「こんな大変な思いをして1つの薬を出していたのか・・」
「そうよ」
「それは知らなかったよ。入院したらポッと出してくるじゃん「お薬ですよ」みたいな。あれもなかなかの苦労というかそういうプロセスを踏んで出されてたんだな!」
「そうよ」
「そういう話を聞くと、与薬トレーのこういう色んな薬が入ってるのが恐ろしく思えるな。怖すぎない?何が入っているかわからないし」
出典:ひとりで学べる医療安全(照林社)
「怖いよ。だから全部中身を確認してるよ」
「これ例えばロキソニンって書いてあっても本当にロキソニンが入ってるかわからないだろ?」
「そうよ。そうやって確認してるよ全部」
6Rは医師、薬剤師、看護師すべてが確認する
治療目的によって医師は薬の処方(指示出し)、薬剤師は調剤(現物の用意)、看護師は患者への与薬を行う。わかりやすく言うと、医師が「この薬を飲ませて おいて」といった薬を薬剤師が「できました」と調剤して看護師が「お薬です」と患者に渡す。ざっくりだけどこんな流れでも、もし間違った薬を投与した場合看護師にも責任がある。
ーー薬をどうやって確認するの?
薬って全部番号が打ってあるじゃん。なんかアルファベットとか数字とか。あれって全部薬の事典で全部調べられるのよ。それで「あ、この薬は何ミリのあの薬か」って自分で調べて、袋の中に入っている薬が全部あってるか確認して、大丈夫なものだけを残すの。
ーー袋に書いてある薬剤名と中身が違うこともあるわけか
あるよ。薬剤師さんがその作業をしているはずなんだけど、それでも抜け落ちて上がって来ることもあるからこういう予防をしないといけないの。袋が5つも6つもあるような患者さんだったら、違う患者さんの薬が入る可能性もあるわけじゃん。だからまずこの患者さんでいいのか、薬剤名は合っているか、投与する日にちや時間があっているか、量は正しいか、内服なのか注入なのか、その人の病気にあった薬が出ているか。これらをいつも確認しながら薬を渡すの。それが6Rじゃん。
ーー6Rだね。
でしょ。
「この患者の、この病気のために、この薬を、この時間に、この量で、この場所に投与するってことか」
「そう。そういう作業を日ごろからいつでも何に対してもするってことが看護師には当たり前なわけよ」
「この6Rっていうのは患者を守るためでもあり、医療事故を減らすためでもあるわけだね」
「そう。自分を守るためでもあるの。看護師になって10年以上たつけど今でも薬の投与は怖いよ。だからしっかり確認するようにしてる」
「なるほど」
守れなかったら看護師じゃない
「学生の輸液ポンプの使い方の演習でみんなに言ったんだけどね。自分たちが誤った投与や違う薬を出したりすると、下手したら患者が死んでしまうことがあるよって。自分たちがいかに危険なことをしているかを認識して、正しい使い方正しい投与をしないと患者さんを傷つけるし自分も傷つくことになるよって指導したよ」
「なるほどね。熱く語ったわけだ」
「だってそれ守れなかったら看護師じゃないから」
「看護師ではいられないってことだよね」
「うん。やっている意味がないよね」
たまにはこういうまじめな話もいいですね。